一夜明けて。
十分な休息を取ったフィア達は、朝から首長官邸に向かった。
そこで、ウェズは当然の疑問をぶつける。
ウェズ「ねー、一応モーサルのボスなわけでしょ? いきなり首長に会わせてくれるもんなの?」
フィア「私一度お会いしたことあるから大丈夫……多分ね」
ウェズ「ふーん……」
あまりモーサルの政情はよくないので、当然ガードが厳しくなっている可能性はあった。
ただ、政治家というものは人の顔を忘れないものだ。
フィア「官邸には誰でも入れることは入れるから、なんとかなるわよ」
ロゼ「いってみよー(´▽`)」
そう言ってロゼは官邸のドアに手をかけた。
衛兵も特に見咎めることなく通してくれるので、問題ないのだろう。
入ると、首長のイドグロッド・レイヴンクローンが玉座で瞑想にふけっているようだった。
玉座の周囲には、瞑想のためのものであろう濃密な香が漂っている。
フィア達の気配を察知して、目を開けた。
イドグロッド「ほう、あんたたちが来てくれたのかい。そっちはフィアだったかね、ムーアサイドに泊まってる」
フィア「はい、お久しぶりです、首長」
やはり、名前を覚えていた。
もっとも、この首長は強力な予知の能力の持ち主でもある。
彼女にとって『既に知っている』というのはたとえ会っていなくてもあり得るのかもしれないのだが。
イドグロッド「そっちの2人は初対面だね。私が首長のイドグロッドだよ。あんたたちはモーサルの問題を解決してくれようとしている。歓迎するよ」
いきなり来た理由を言い当てられて驚く2人。
ウェズ「え、ど、どゆこと?」
ロゼ「すごい、なんでしってるの?(゜ω゜;)」
フィア「この方は”夢見”っていう予知の力で色んな事をご存知なの」
イドグロッド「そういうこと。知ってる者がいると説明の手間が省けていいねえ」
玉座に座ったままだったが、彼女は少し姿勢を正した。
イドグロッド「こうして私を尋ねた目的を、あんたたちの口から聞きたいんだが」
そう、彼女が予知できていたとしても、こちらが意思を表明することには意味がある。
フィア「……はい。フロガー家の、火事の件です。私達に調査を任せてもらえないでしょうか」
イドグロッド「もちろん、やってくれるならお願いしたいわ。もう事件からそれなりに時間が経つ。だが、志願者がいなくてね」
うなずくと執政を呼んで、何事か告げた。
執政はなにかの紙を持ってきたようだ。
首長は手にとってそれを見ながら、説明を始めた。
イドグロッド「あの火事の原因について、フロガー本人は妻が熊の油を火の中にこぼしたせいだと言ってる。だが、そういう状況で妻子が逃げないのは不自然だね。だから、フロガーが火をつけたんだって噂も広まる。なにせ、あいつがアルバにプロポーズした時、まだ家の残り火がくすぶってたんだからね。欲望のために人はとんでもないことをしでかすものさ。誰もが疑っちゃいるが、証拠がない」
そこまで言って、首長はフィアを見つめた。
イドグロッド「火事の時、恐ろしい悲鳴がしたせいでみんな呪いを恐れて焼け跡に近寄らない。だが、あそこを調べればあんたたちは何かを見つけるはずだよ。行ってごらん」
フィア「う……わかりました」
イドグロッド「フロガーが有罪か無罪か、明らかにしておくれ。解決したら謝礼を払うよ」
フィア自身もなにやらおぞましいものを感じて、近寄らなかった1人だったのだが……
首長に正式に依頼されては、やむをえない。
フィアの反応に満足気にうなずくと、首長は再び瞑想のため目を閉ざした。
フィア「それでは失礼します」
フィア達はそれぞれ一礼すると、官邸を後にした。
重い足を焼け跡へと向けるフィア。
なにか見つける、と言われても、あまり気持ちのいいものでないだろうとは予想がついた。
フィア「うー……」
イマイチ乗り気でないフィアをよそに、残りの2人は盛り上がっていた。
ウェズ「まさか占い婆が首長だなんてねー。困ったらあの人に聞けばいいじゃん、すぐ解決しそうだわ」
ロゼ「だねー、ロゼびっくり(゜▽゜)」
のんきな会話をしながら焼け跡の前にたどりつく。
首長官邸からもそう離れていないのだ、ここは。
もうすっかり焼け跡は雪が積もっていて、恐ろしい火事の熱はどこにもない。
だが、それは長いこと放置されていたという証でもあった。
おそるおそる中を覗き込むフィア。
とてもへっぴり腰だった。
フィア「もしもーし、誰かいますかー、いませんよねー……そうですよねー……」
「そうでもないんだけど」
フィア「えええええちょっとまって何それ聞いてないー!!!!」
取り乱すフィアだが、残りの2人は至って冷静だった。
ウェズ「……子供の幽霊? 平気そうよアレ」
ロゼ「ねぇねぇ、おなまえなんていうの?(・ω・)」
明らかに幽霊なのに。まるで何とも思ってない2人。
確かに、ゼディスの面々を見る限りこの程度の非常識はなんでもないだろう。
フィアはだんだん1人でオーバーリアクションしてるように見えて気まずくなってきた。
深呼吸して、隣に並ぶ。
幽霊「私はヘルギ。でも、お父さんが知らない人と話しちゃダメって」
ロゼ「むー、フィアちゃんは?(*゜ー゜)」
ヘルギ「知ってる」
幽霊の反応を見て、ロゼとウェズはフィアをじっと見つめた。
フィア「う、う、知ってるわよ……そりゃ……」
確かにフロガーの幼い娘は知っていた。こんなふうに体の向こう側が透けるようになる前までは。
2人に目線をやるとうんうんと頷く。
どうしてもフィアが応対するしかないようだ。
フィア「えー、と、ヘルギちゃん、よね……」
ヘルギ「久しぶりフィアちゃん」
その透ける笑顔に合わせてなんとか自分の口角を上げると、フィアは質問を切り出した。
フィア「お家で何があったのか、教えてくれる?」
ヘルギは少しの間考えるそぶりをして、答えた。
ヘルギ「煙で目が覚めたの。熱くて、怖くて、だから隠れたの。そうしたら、寒くて暗くなった。もう全然怖くないの」
あまり参考にならないが、彼女が火に巻かれてしまったのは事実のようだ。
ヘルギ「でも、さみしいの。フィアちゃん、一緒に遊んでよ。前にやったよね、かくれんぼ」
フィア「う……」
あまり嬉しくない展開になってきた。
だが、これも目的のため。
彼女は火をつけた犯人を知っているかもしれないのだ。
フィア「もし、見つけたら、誰がお家に火をつけたのか教えてほしいの」
ヘルギ「うん、いいよ。でもね、夜まで待たないとダメなの。もう一人の方も遊んでるから、それまで出てこられないの」
フィア「も、もうひとり……?」
どういう意味だろう。
ヘルギ「教えられない。聞かれているかもしれないから。すぐ近くにいるの……先に私をみつけて。そうすれば、教えてあげられる」
そこまで言うと、ヘルギの幽霊はふっと姿を消した。
まるで、わからない。
フィア「どういうことだろう……」
ロゼ「ロゼ、かんがえるのにがて(´・ω・`)」
2人に相談しようかとも思ったのだが、ロゼには先手を打たれた。
実際、あんまり頼りにできる感じではないのだが。
ウェズ「さっむいわねここ……とりあえずさ、さっきの占い婆のとこ行こーよ。夜まで待てって言ってたけど、ここでって意味じゃないでしょー、さすがに」
フィア「そうだね……うん、助言を頂こう」
こういう時、自分勝手ではあるがウェズの切り替えは早い。
自分たちで考えてどうしようもなさそうなら、助言をもらった方がマシだろう。
3人は首長官邸に戻ることにした。
玉座の周囲には、瞑想のためのものであろう濃密な香が漂っている。
フィア達の気配を察知して、目を開けた。
イドグロッド「ほう、あんたたちが来てくれたのかい。そっちはフィアだったかね、ムーアサイドに泊まってる」
フィア「はい、お久しぶりです、首長」
やはり、名前を覚えていた。
もっとも、この首長は強力な予知の能力の持ち主でもある。
彼女にとって『既に知っている』というのはたとえ会っていなくてもあり得るのかもしれないのだが。
イドグロッド「そっちの2人は初対面だね。私が首長のイドグロッドだよ。あんたたちはモーサルの問題を解決してくれようとしている。歓迎するよ」
いきなり来た理由を言い当てられて驚く2人。
ウェズ「え、ど、どゆこと?」
ロゼ「すごい、なんでしってるの?(゜ω゜;)」
フィア「この方は”夢見”っていう予知の力で色んな事をご存知なの」
イドグロッド「そういうこと。知ってる者がいると説明の手間が省けていいねえ」
玉座に座ったままだったが、彼女は少し姿勢を正した。
イドグロッド「こうして私を尋ねた目的を、あんたたちの口から聞きたいんだが」
そう、彼女が予知できていたとしても、こちらが意思を表明することには意味がある。
フィア「……はい。フロガー家の、火事の件です。私達に調査を任せてもらえないでしょうか」
イドグロッド「もちろん、やってくれるならお願いしたいわ。もう事件からそれなりに時間が経つ。だが、志願者がいなくてね」
うなずくと執政を呼んで、何事か告げた。
執政はなにかの紙を持ってきたようだ。
首長は手にとってそれを見ながら、説明を始めた。
イドグロッド「あの火事の原因について、フロガー本人は妻が熊の油を火の中にこぼしたせいだと言ってる。だが、そういう状況で妻子が逃げないのは不自然だね。だから、フロガーが火をつけたんだって噂も広まる。なにせ、あいつがアルバにプロポーズした時、まだ家の残り火がくすぶってたんだからね。欲望のために人はとんでもないことをしでかすものさ。誰もが疑っちゃいるが、証拠がない」
そこまで言って、首長はフィアを見つめた。
イドグロッド「火事の時、恐ろしい悲鳴がしたせいでみんな呪いを恐れて焼け跡に近寄らない。だが、あそこを調べればあんたたちは何かを見つけるはずだよ。行ってごらん」
フィア「う……わかりました」
イドグロッド「フロガーが有罪か無罪か、明らかにしておくれ。解決したら謝礼を払うよ」
フィア自身もなにやらおぞましいものを感じて、近寄らなかった1人だったのだが……
首長に正式に依頼されては、やむをえない。
フィアの反応に満足気にうなずくと、首長は再び瞑想のため目を閉ざした。
フィア「それでは失礼します」
フィア達はそれぞれ一礼すると、官邸を後にした。
重い足を焼け跡へと向けるフィア。
なにか見つける、と言われても、あまり気持ちのいいものでないだろうとは予想がついた。
フィア「うー……」
イマイチ乗り気でないフィアをよそに、残りの2人は盛り上がっていた。
ウェズ「まさか占い婆が首長だなんてねー。困ったらあの人に聞けばいいじゃん、すぐ解決しそうだわ」
ロゼ「だねー、ロゼびっくり(゜▽゜)」
のんきな会話をしながら焼け跡の前にたどりつく。
首長官邸からもそう離れていないのだ、ここは。
もうすっかり焼け跡は雪が積もっていて、恐ろしい火事の熱はどこにもない。
だが、それは長いこと放置されていたという証でもあった。
おそるおそる中を覗き込むフィア。
とてもへっぴり腰だった。
フィア「もしもーし、誰かいますかー、いませんよねー……そうですよねー……」
「そうでもないんだけど」
フィア「えええええちょっとまって何それ聞いてないー!!!!」
取り乱すフィアだが、残りの2人は至って冷静だった。
ウェズ「……子供の幽霊? 平気そうよアレ」
ロゼ「ねぇねぇ、おなまえなんていうの?(・ω・)」
明らかに幽霊なのに。まるで何とも思ってない2人。
確かに、ゼディスの面々を見る限りこの程度の非常識はなんでもないだろう。
フィアはだんだん1人でオーバーリアクションしてるように見えて気まずくなってきた。
深呼吸して、隣に並ぶ。
幽霊「私はヘルギ。でも、お父さんが知らない人と話しちゃダメって」
ロゼ「むー、フィアちゃんは?(*゜ー゜)」
ヘルギ「知ってる」
幽霊の反応を見て、ロゼとウェズはフィアをじっと見つめた。
フィア「う、う、知ってるわよ……そりゃ……」
確かにフロガーの幼い娘は知っていた。こんなふうに体の向こう側が透けるようになる前までは。
2人に目線をやるとうんうんと頷く。
どうしてもフィアが応対するしかないようだ。
フィア「えー、と、ヘルギちゃん、よね……」
ヘルギ「久しぶりフィアちゃん」
その透ける笑顔に合わせてなんとか自分の口角を上げると、フィアは質問を切り出した。
フィア「お家で何があったのか、教えてくれる?」
ヘルギは少しの間考えるそぶりをして、答えた。
ヘルギ「煙で目が覚めたの。熱くて、怖くて、だから隠れたの。そうしたら、寒くて暗くなった。もう全然怖くないの」
あまり参考にならないが、彼女が火に巻かれてしまったのは事実のようだ。
ヘルギ「でも、さみしいの。フィアちゃん、一緒に遊んでよ。前にやったよね、かくれんぼ」
フィア「う……」
あまり嬉しくない展開になってきた。
だが、これも目的のため。
彼女は火をつけた犯人を知っているかもしれないのだ。
フィア「もし、見つけたら、誰がお家に火をつけたのか教えてほしいの」
ヘルギ「うん、いいよ。でもね、夜まで待たないとダメなの。もう一人の方も遊んでるから、それまで出てこられないの」
フィア「も、もうひとり……?」
どういう意味だろう。
ヘルギ「教えられない。聞かれているかもしれないから。すぐ近くにいるの……先に私をみつけて。そうすれば、教えてあげられる」
そこまで言うと、ヘルギの幽霊はふっと姿を消した。
まるで、わからない。
フィア「どういうことだろう……」
ロゼ「ロゼ、かんがえるのにがて(´・ω・`)」
2人に相談しようかとも思ったのだが、ロゼには先手を打たれた。
実際、あんまり頼りにできる感じではないのだが。
ウェズ「さっむいわねここ……とりあえずさ、さっきの占い婆のとこ行こーよ。夜まで待てって言ってたけど、ここでって意味じゃないでしょー、さすがに」
フィア「そうだね……うん、助言を頂こう」
こういう時、自分勝手ではあるがウェズの切り替えは早い。
自分たちで考えてどうしようもなさそうなら、助言をもらった方がマシだろう。
3人は首長官邸に戻ることにした。