聖域からシセロと夜母が姿を消して、数日。
一党の皇帝暗殺計画は、中途で止まったままだった。
ガイウス・マロを殺害した影響で、帝国がスカイリムの視察を完了するまでに時間がかかっていた。
その為、皇帝が来るための手はずがなかなか整わなかったのだ。
その間、ヴィオラは自分への風当たりが変わっていることを自覚せざるを得なかった。
なにせ、言葉を貰えるはずの夜母がいなくなってしまったのだ。
夜母のいない聞こえし者など、ただの人と変わらない。
もっとも、皇帝暗殺という大仕事を請け負っているのは事実なのだが。
ヴィオラ(これはマズイんじゃないの、ゼディスの皆様)
夜母がいない以上、彼女が一党にゼディスからの依頼を持ってくることはできなくなる。
当然だ。
”夜母からの依頼”が夜母の不在時に届くわけがないのだから。
シセロが何を思って夜母のミイラごと失踪したのかは分からないままだったが、この状況はむしろ、アストリッドの望んだものに近くなっていた。
聞こえし者が現れようとも、彼女が一党を統率していくことは変わらないのだ、という。
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だが、このような事態に早急に何か手を打ってくるだろうと思われたゼディスからの連絡はなかなか来ない。
今まではこちらが報告しなくてもだいたいのことは向こうに把握されていた。
おそらく、今回の事件の顛末も既に知っているだろう。