秘密結社ゼディス

ゲーム「The Elder Scrolls V : Skyrim」の世界を土台にして創作した、
独自設定の創作小話を連載しています。
多量のMod導入環境が舞台のため、
ロアフレンドリーではないことをご承知の上で御覧ください。

Episode08-ドレッドロードに花束を 03

聖域からシセロと夜母が姿を消して、数日。
一党の皇帝暗殺計画は、中途で止まったままだった。

ガイウス・マロを殺害した影響で、帝国がスカイリムの視察を完了するまでに時間がかかっていた。
その為、皇帝が来るための手はずがなかなか整わなかったのだ。

その間、ヴィオラは自分への風当たりが変わっていることを自覚せざるを得なかった。
なにせ、言葉を貰えるはずの夜母がいなくなってしまったのだ。
夜母のいない聞こえし者など、ただの人と変わらない。
もっとも、皇帝暗殺という大仕事を請け負っているのは事実なのだが。

ヴィオラ(これはマズイんじゃないの、ゼディスの皆様)

夜母がいない以上、彼女が一党にゼディスからの依頼を持ってくることはできなくなる。
当然だ。
”夜母からの依頼”が夜母の不在時に届くわけがないのだから。

シセロが何を思って夜母のミイラごと失踪したのかは分からないままだったが、この状況はむしろ、アストリッドの望んだものに近くなっていた。
聞こえし者が現れようとも、彼女が一党を統率していくことは変わらないのだ、という。


8-3-1


だが、このような事態に早急に何か手を打ってくるだろうと思われたゼディスからの連絡はなかなか来ない。
今まではこちらが報告しなくてもだいたいのことは向こうに把握されていた。
おそらく、今回の事件の顛末も既に知っているだろう。





続きを読む

Episode08-ドレッドロードに花束を 02

ヴィオラがゼディスの2人と今後の計画を練っていた、その時より少し時間はさかのぼる。
それは、ヴィオラが聖域に戻ってすぐ、呼び出されて出ていった後のこと。

ダリオ「……随分慌ただしいな、あいつは」

誰に聞こえるでもない呟きを漏らす。
ヴィオラの行動に対して、一党の中で彼だけが疑いの目を向けていた。
ダリオだ。


8-2-1


片手にある銀杯をテーブルに置く。
ついさっきまで、ソリチュード土産のスパイス入りワインが入っていた器だ。
適度に酔いが回ってきているので、後を追うのは面倒だった。


頭を軽く振って思い出す。

彼は、前にヴィオラが花嫁殺しの仕事の報告をアストリッドにする所を陰で聞いていた。
そして、抱いていた違和感が大きくなった。

彼女は、殺害の時のあの魂縛の光を見ていたはずなのだ。
だが、彼女の口からそのことが話題にのぼることはなかった。

ヴィオラの報告が終わり、彼女が部屋に戻るのを確認してから、ダリオはアストリッドの所に姿を見せた。
彼は見たままを話した――魂縛の件は除いて。
アストリッドは報告の内容に食い違いがないことに満足したのか、特に深く訊いてはこなかった。





続きを読む

Episode08-ドレッドロードに花束を 01

ホワイトランのいつもとそう代わり映えのしない夜。
日が落ちても、バナードメアの酒場は客で賑わっていた。
いつも通りのミカエルの赤のラグナルが聞こえてくる店内から、目深にフードをかぶった1人の女が出てくる。
意図的に気配を薄くしている彼女が店を去ったことに、まだ誰も気づいていなかった。

彼女はそのまま店から遠ざかり、人気のない路地へと歩いていく。
誰にも見られていないことを確認すると、フードを取った。
黒い髪がこぼれる。

ヴィオラだ。


8-1-1


ヴィオラ「ふぅ。……前回のもそうだけど、今回も注文が多い仕事でほんと面倒。とっとと帰って一杯やりたいわ」

独り言を漏らす。
なぜ酒場に居たのに酒が飲めなかったのかといえば、その酒場で”仕事”をしてきたからだ。

バナードメアには帝国の近衛兵、ペニトゥス・オクラトゥスの指揮官の息子であるガイウス・マロが泊まっていた。
酒場のすぐ隣にある個室に一歩入れば、彼に会えるだろう。
ありもしない密通の証拠を握ったまま、息をしていない彼に。
今回の仕事は、彼に密通者としてのぬれぎぬを被せて、厄介な父親、マロ指揮官の権威が失墜するように仕向けるためのものだった。

ゼディスからは、例によって武器の指定がされていた。
ついでに黒魂石を手渡されて、仕事が済んだら返すように、とのこと。
要するにガイウスの魂を回収してこいということだ。
何に使うかは知らないが、すでに彼の魂を吸った魂石は彼女の懐で不気味な光を放っていた。

ヴィオラ「永遠にその体とおさらばしーたー♪……ガラじゃないわね、やっぱり」

小声で下手くそな吟遊詩人の真似をしかけて、やっぱりやめる。
吟遊詩人と兼業している器用な同僚はいないこともないが、彼女にはそういう陽気さは無縁だ。
そのままホワイトランの外へと向かう。

バナードメアで女将フルダのものと思われる悲鳴が響き渡ったのは、彼女が姿を消した後だった。



皇帝が実際にスカイリムまでやってくる。
この長引く内戦の収拾をつけるために。

当然の下準備として、警護の下見、危険な地域の把握など、調べておかねばならないことは山ほどある。
そのような決して安全とは言えない任務にマロ指揮官が自分の息子を起用したのは、彼に功績を立てる機会を与えてやりたいという親心もあったのだろう。
しかしその気持ちは最悪の結果を生んでしまったのだが。

闇の一党による皇帝殺害計画は、順調に行っているように見えていた。





続きを読む
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ